BCP策定メソッド
第三回 初動を固める
発災直後の行動を整理してみましょう。
次のステップとして、まず事象やトラブルを整理していきます。大地震が発生した場合、例えば、ご利用者の転倒やベッドからの転落、職員のケガ等の事象が想定できますが、それぞれ「ご利用者の確認」「職員の確認」とまとめます。建物にヒビが入る、ガラスが割れて散乱する、天井がはがれ落ちる等は「建物状況の確認」、停電、ガス遮断、断水は「ライフラインの確認」とまとめます。そして、まとまりごとに、災害が発生したときに直ちに行う行動(=初動)を「初動シート」に落とし込んでいきます。多くの事業所では、恐らく発災直後の行動が明確に決まっていないのではないでしょうか。
①初動対応
~災害対応の最重要ポイント
初動シートの作成には手間や時間、専門知識が必要ですから、かなり骨が折れますが、ここを丁寧に行うことこそがBCPの実効性を高めるカギとなります。でき上がった初動シートは、いつでも確認できるように職員の目につく場所に貼り出してください。
なお、風水害は地震災害とは異なり、発生を予想できます。風水害が予想される時点で、どのような「初動」をとるかが被害を食い止めるポイントとなります。具体的には、建物への雨・風対策、避難行動の準備、警報や警戒レベルごとの職員の出退勤の基準の確認、緊急時の連絡方法・手段の確認、断水や停電に対する対策の実施、ガソリンや備蓄品の確認、防災用品を準備していきます。
■初動シート記入例
| 災害種類 {大地震・風水害・感染症} | ||
| 行うべき行動 | 具体的な項目 | 確認済 |
| ご利用者の 確認 |
点呼 | ✔ |
| ケガ人の有無 | ✔ | |
| 職員の確認 | 勤務者の点呼 | ✔ |
| ケガ人の有無 | ✔ | |
| 全職員の安否確認 | ✔ | |
| 全職員家族の安否確認と被災状況 | ✔ | |
| 建物状況の 確認 |
壁面 | ✔ |
| 天井 | ✔ | |
| ガラス | ✔ | |
| 床・扉の開閉等 | ✔ | |
| ライフライン の確認 |
電気 | ✔ |
| ガス | ✔ | |
| 水道 | ✔ | |
| 電話・通信 | ✔ | |
②災害対策本部
~いち早く体制を整える
大地震発生時には、災害対策本部を素早く立ち上げ、すみやかな復旧を目指します。立ち上げの三種の神器は、「ホワイトボード」「施設の図面」「ご利用者と職員の名簿」です。これらを用いることで情報整理が格段に向上します。一方、風水害においては、発災前に災害対策本部を立ち上げます。台風であれば接近が予想される時点が、立ち上げのタイミングとなります。「初動シート」にも、災害発生の恐れがある時点での行動をリストアップします。
また、仮に管理者(指揮命令者)から指示・命令がなくとも、現場職員がスムーズに行動できる体制を作り上げます。「災害対策本部」と言うと、管理者クラスが集まる大掛かりな会議を想像してしまいますが、そんな必要はありません。通信の状況にもよりますが、SNS上で立ち上げて起動させ、その中で情報共有を行う方法もあります。その後の状況の変化に合わせて、フレキシブルに体制を変更していけばよいのです。
| 工程 | 担当 | 手順 | 備考(参考文章・記録等) |
| 災害対策本部準備室設置 | 本部長 本部長代理 |
・台風上陸に備え、上陸3日前には設置 ・参集要件書を確認する |
【作業項目】スマホ・タブレット・パソコン・テレビ・ラジオ等で情報収集 |
| 災害対策本部LINE OUTPUT | 本部長 本部長代理 |
・台風上陸2日前に、正式に災害対策本部の設置を宣言する旨を伝える | 【作業項目】上記アイテムを使用し、正確な情報を収集 |
| 災害対策本部設置宣言 | 本部長 本部長代理 |
・本部長より、災害対策本部OUTPUTのLINEグループに配信する | 【配信項目】「●月●日時に災害対策本部を設置します」 【作業項目】本部設置キットを使い、本部を設置する |
| 配信・受信 | 本部長 本部長代理 各事業所 |
・右記の本部配信項目に沿って、各事業所は準備に即、取りかかる。参集基準に沿って勤務状況を調整し、人員確保、安全に努める | 【配信項目】自主避難所設置・発電機の手配・ガソリンチェック・対応と対処・対策を導き出すためのシートの確認・初動シート(風水害)にて作業開始 |
③情報収集
~リスクに合わせてリスト化
初動において必要な情報をいくつか挙げてみます。地震発生時は、ご利用者や職員の安否情報、施設内の被害状況の他にも、地震の規模、震源地、町の被害状況、地域によっては津波情報や土砂崩れ、避難所開設情報などを素早く収集していきます。
風水害が予想される場合は、各種警報や警戒レベルの発令、降雨状況、河川の水位、避難所開設情報、川の氾濫、内水氾濫、土石流等災害発生状況などです。職員に関しては公共交通機関の運行状況、保育園や小中学校等の休園・休校情報や避難先、勤務シフト等が挙げられます。
地域特性により収集する情報は異なります。第1回でお話ししたリスクと照らし合わせながら、どのような情報を収集するのか、リスト化しておくことをお勧めします。また、発災時及び発災が予想される場合は、収集した情報をぜひ、記録しておいてください。それらは災害対応や事業復旧に欠かせない基本情報になるからです。
*第三回まとめ*
次回は「混乱期を乗り越える」です。混乱した状況を招く要因とその対策を考察してみます。
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第一回 リスクの把握
皆さんの施設や事業所の災害リスクを明確にしてみましょう。 |
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第二回 シナリオを描く起こりうることを具体的に考えてみましょう。 |
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第三回 初動を固める発災直後の行動を整理してみましょう。 |
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第四回 混乱期を乗り越える初動後に発生する問題、課題を想像してみましょう。 |
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第五回 復旧を加速する災害関連死を防ぐために早期復旧を計画してみましょう。 |
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第六回 システムとして機能させる日常業務から活用させることで災害対応力、組織対応力を高めてみましょう。 |
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災害想定シート 評価スケール編チェックシートを用いて、策定したBCPが災害時にスムーズな行動を行うための計画になっているかを確認してください。 |